[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
以前書いた、「攻防戦」http://miraikazoku.blog.shinobi.jp/Entry/57/
の後の、まもちゃん家行ってからの会話みたいなものです。
拍手で見てみたいとのコメントありましたので、書いてみました。
(そんなんばっかといわないでー♪)
今度もまた勢い。そして以前以上にいろいろと……orz ですが、
気にしないって方はどぞ!
「遅いな」
時計を見て、思わず言葉が漏れた。
今日は彼女……月野うさぎと、
その彼女との未来の子供であるちびうさが来る予定になっていたのに、
約束の時間を30分すぎても、彼女達は現れない。
これが、うさぎだけだったのならまだ分かるのだが、
ちびうさも一緒……となると、状況は変わってくる。
(とりあえず、探しに……)
そう思って、腰をあげた時、
ピンポンピンポンピンポーン
聞きなれた、チャイムの音が鳴った
だって、それは
「はぁっはぁっ、き、今日もあ、あたしが勝ったわね……う……さぎ……」
「な、なに言ってる……のよ、ドアに最初に手をかけたのは……あたし……よ……」
返事もせずに急いでドアを開けた目の前には、
先ほどまで考えていた人物達が、いつものように肩で息をしつつ、
いつものような口調で、いつものようにいがみあっていた。
「なによー!あたしがドアに手をかけようとした時に、ダッシュでタッチしただけのくせして!」
「リーチが短いあんたが悪いの!先に手をかけた人が勝ちよ!!」
「まあまあ、2人とも。そろそろあがらないか?」
埒があかない問答を繰り返す2人の姿に内心ほっとしつつ、
放っておけばずっと続けているであろう会話に苦笑して、やんわりと2人を促す。
『うん!まもちゃん!』
満面の笑顔とともに、タイミングを合わせたように息ぴったりの声が返ってくる。
本当に、この2人は仲がいい。
嬉しそうに部屋にあがっていく2人の後姿を見つつ、しみじみとそう思った。
「ねーねーまもちゃーん。オレンジジュース開けちゃってもいい?」
「ああ、いいよ」
「あ、ちょっとあんた、ちゃんと手を洗ってからにしなさいよね!」
普段ほとんど人気の無いキッチンから、賑やかな声が聞こえてくる。
何かあったのだろうかと心配していたが、
その心配は無用のものだったようで、
いつものように元気な姿で2人はあちらこちらと世話しなく動き回っている。
何事もなくてよかったと思う反面、
どうして、こんなに遅くなったのか、という疑問もわいてくる。
彼女の補修が長引いたのだろうか?
それとも、来る途中で……?
「はい、まもちゃんの分!」
考えをめぐらせていると、目の前にずいっとコップが差し出された。
見れば、3人分のコップと、茶菓子の準備を終えた2人が、目の前に座っていた。
「ああ、ありがとう」
この思考は一時中断だな。
目の前で繰り広げられるささやかな団欒に身を入れるべく、
俺はコップを受け取った。
「それでねー、今学校でみんなでひまわり育ててるの!」
「へー。そうなのか」
団欒の場は、大抵、彼女やちびうさの学校の話や、友達の話が主となる。
自分がどんなことをして、どんな風に思ったか、
以前の俺だったら、くだらないとして相手にしない内容だったのだろうけれど、
今では、楽しいと感じる辺り、2人の影響は多大だ。
「あんた、うまく育てられてるの?すーぐ枯らしたりするんじゃないー?」
「しませんよーだ。ちゃんとみんなで当番決めて水やってるもーん」
「でも、当番の子が忘れちゃったりしてねー」
「うさぎじゃないから大丈夫だもー…………」
途中まで言いかけて、ハタと動きが止まる。
どうしたのだろうかと顔をのぞきこむと、
さーーーーっと顔が青ざめていくのが見えた。
「あーーそうだったーーー!当番九助だったんだーーー!!」
「き……九助ってあの、九助君か?」
「うんっ!あいつ今日サッカーの試合があるからって大急ぎで帰っていっちゃったのよ!
ぜーーーーったいひまわりのこと忘れてる!!
あーーーーどうしよーーー!!」
いつになく真剣に頭を抱えるちびうさに、いつもならからかう彼女も俺も焦る。
「大丈夫だよ、一日くらいやらなくても、そんなに弱い花じゃないし……」
「ダメ!だって最近夜もあっついから、その間に枯れちゃうかもーーー!!」
「ほ、ほら、雨が降れば、大丈夫かもよ?確かなんか明日は雨って言ってたような……」
彼女の必死のフォローにちびうさの顔がパッと輝く。
「そっか!雨よ雨!ナイスうさぎ!……だけど」
しかしパッと輝いたのも束の間、すぐに胡乱な眼差しになる。
「うさぎがいったんじゃなーイマイチ信用が……」
「ちょっと!なによそれ!!」
「ね、ね、まもちゃん、テレビつけて天気予報見てもいい?」
「あ、ああ、いいけど」
折角言ってあげたのにその態度は何よ!と憤慨している彼女を尻目に、
ちびうさは側にあったテレビを手慣れた手つきでつける。
パチリ
軽い音とともに、画面が瞬時に明るくなる。
すると、聞きなれた音楽とともに、見覚えのある3人の姿が画面いっぱいに映し出された。
「あ、スリーライ……」
ブチッ
彼女がその3人を表す名称を言い終える前に、
機械音とともに、画面はすぐに暗転した。
少々乱暴な仕草で、テレビを消したのは、
もちろん、目の前にいた、ちびうさだ。
しばらく、テレビを消したときと同じ体勢を維持していた彼女は、
やがて、くるりと振り向くと、明るく言った。
「やっぱり、いいや。また明日早く行ってお水あげればいいだけだよね!」
その、ちょっと無理をしたような笑顔に、
何らかの感情が込められているのは明白だった。
確かめようと口を開きかけた俺より早く、
彼女が少し呆れた様子でちびうさに声をかけた。
「もー、またあんたそんなことするんだからー。
いくらスリーライツが好きじゃないからっていって、
いきなりスイッチ切るの止めなさいよ」
「いつも……って、もしかして、家でもそうなのか?」
驚いた俺の言葉に、彼女は頷く。
「そ。とにかく、スリーライツの姿が出ると、
消すか、無理矢理チャンネル変えちゃうの
なんでそんなにするのか分からないけど……」
「……だって……好きじゃないもん!」
ぷいっと横を向くちびうさに、彼女は、はあとため息をついた。
「もー、またそんなこといって。みんないい人だよ?
あんただって今日星野と一緒にいたんだから、分かるでしょ?」
「星野君と……?」
青天の霹靂とはまさにこのことだろうか。
予想だにしなかった事実に、コップを落としそうになった。
「うん。今日ね、ちょーど帰る時間が一緒になったから、
途中まで星野と一緒に帰ってたの」
そうか……だから、30分も遅れたのか……。
彼女の言葉に一人納得する。
星野君というのは、彼女自身は知らないようだが、
十中八九、彼女のことを好いているらしいことが
彼女の話に出てくる言葉の内容、態度ですぐに分かった。
……しかし、待ち伏せとは……そこまでやるとは思わなかった。
油断も隙もないな。
そう後悔している俺の心境を知らず、彼女はなおも話をつづける。
「そしたら、ちびうさがクレープ食べたいって言い出して……
買ってきら、星野に言ったのよ
『あたしのママに手ぇ出さないで』
って」
……
…………
ママ?
「……言ったのか?ちびうさが?」
あまりの驚きに、反射的にちびうさを見ると、
ちびうさは顔を赤くして俯いた。
「確かに未来ではそうかもしれないけど……
何もあそこでいわなくても……」
だんだん思い出して恥ずかしくなってきたのか、
ほんのり頬を染めつつ、でも意地を張っているのか、
口調は呆れたような、怒ったような口調で、彼女はつづける。
「だ、だって」
すると、ずっと黙っていたちびうさが、たまりかねたように口をだした。
「だって、ヤなんだもん。う、うさぎがあの人にとられそうで…………」
しーん。
場が、今までなかったかのような、静寂に包まれた。
でも、嫌な沈黙じゃない。
恥ずかしさや、意地っ張りな思いも含まれているけれど、
どこよりも温かい思いが含まれている、沈黙だった。
ちびうさは、顔を赤くして俯いて、
彼女も、顔を赤くして、ちびうさがいる方向とは反対方向を向いている。
ああ、
ああ、全く、この2人は、なんて。
「……ところで、そろそろ夕食の時間だから、外に出ようか?2人とも」
ヘタをするとずっと続いてしまいそうな沈黙をそっと破る。
すると2人はパッと顔を輝かせた。
「うん!あたし、あたしね!スパゲティが食べたい!」
「あ、ちょっと!ここぞとばかりにまもちゃんに抱きつくんじゃないーー!!」
「はいはい」
すぐに元通りになる2人だけれど、
さっきの言葉の余韻はきっとまだ残り続けるに違いない。
騒がしさの中にある、お互いを思う気持ちは、何よりも本物。
本当に、この2人は……仲が、いい。
その2人をずっと、守っていきたいと、俺は心からそう思った。
fin
あとがき(反転)
以前、拍手でコメントいただいたときに
後日談が見てみたい!とのお言葉がありましたので、
もやーっとあったイメージを元に書いてみたものです。
……うん、すません。今度は長かったorz
ちょうどいいという言葉はお前にないのかと責められそうですが、
直すのが大変なので(またかよ)そのままゴー。
擬似親子のほのぼのとした日常が伝わればいいなと思います。
前いってたあとがきの雰囲気とはまたちょっと違った感じになりましたが、
これはこれでいいかなっと。
因みに今回のポイントというかやらせたかったことは、
テレビパチッ、ブチッでした(笑)
うちのちびちゃんのママ大好きさは異常ですね(爆)
≪ どうなってるんだろう? | | HOME | | ずっとずっと ≫ |