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未来のプリンセス


ひさびっさーに小話です。
ちびうさちゃんの強がっている胸の裏、みたいな。
しかし、はるかさんの性格がつかめてません……orz
いろいろとつめこんだ感じがするものですが。
よろしければスクロールでドン★












おや、と思ったのはピンクのこんもりとした頭が見えたからで、
思わずバイクを止めてしまったのは、
そういえば、以前も同じ場所の同じ時間にそれが見えたなと思い出したから。


未来のプリンセス


「おちびちゃん、こんな所でどうしたんだい?」
そういって、何気ない声で話しかけると、
桃色の髪を持つ小さな女の子は、驚きで跳ねた髪の勢いそのままに
警戒するようにこちらを向いた。
「……はるか、さん?」
こちらの顔を見るなり、きょとんとした顔になった彼女の表情は
一瞬先にしていた表情とは全く違った無防備さを伴っていて、
なるほど、やはりこの子はあの少女の娘だな、と苦笑してしまった。
「どうしたんだい、こんなところで」
もう一度、最初にかけた言葉を同じ言葉を投げかけると、
少女は少し安心した表情を浮かべ、
十番高校、とでかでかと描かれた校門前の石碑に背中をもたせかけてから口を開いた。
「待ってるの」
「誰を?」
「うさぎ」
「そっか……でも、まだ高校生は学校から出てくる時間じゃないと思うけど?」
遠くにある校舎の時計の針は、まだ三時をまわったばかりで、
高校生の帰宅を待つにはまだ早すぎる。
「今日はたまたま……学校終わるの早かったから……来てみただけ」
襟元の後れ毛をくるくると弄びつつ応える彼女の姿に
苦笑交じりの息をついて、彼女の目線にあうようにしゃがんでじっと彼女を見た。
「嘘は言っちゃいけないよ。おちびちゃん。
 昨日もそうやって今日と同じ時間にここにいたのを僕は見てるんだからね。
 ……君みたいな可愛い子、見間違うはずがないだろう?」
そうやって優しく言うと、彼女はみるみるうちに顔が赤くなったかと思うと、
首をぎゅっと横に向けて、視線をそらした。
「……ごめん、いいたくないんならいいんだよ。
 ちょっとね、気になったものだから」
これ以上追求したら、酷、かな。
そう思って、立ち上がって少し距離を取る。
少し、迫り方を間違えただろうか?と考えた瞬間、
ぼそり、と彼女が何か言った声が聞こえた。
「……ぱい、だから」
「ん?」
「心配だから、待ってるの」
「心配?」
「うん、あのね、うさぎって、隙ばっかりあるでしょ?
 うさぎにとっては、まもちゃんが一番だから、
 他の人なんてなんとも思ってないかもしれないけど、
 だけど、うさぎが好きだっていう人もいるんだよね」
そういうのが『ものずき』っていうのかもしれないけど、と付け加えた彼女の口調は
面白くなさそうで、固い表情を崩さない。
「……つまり、そういう人がいるから、心配で、おちびちゃんは
おだんごを待っているってことかな」
「……うん」
間隔をおいてこくりと頷いた彼女の表情はどことなく暗かった。
まあ、当然といえば当然なのかもしれない。
未来……この小さな彼女が本来いるべき場所……では
彼女の母親と父親は確固たる存在だとしても、
今彼女がいるここでは、まだそうではないのだ。
いくら未来がそうであるとしても、
今ここで父親以外の男で好意を寄せている男が母親の側にいるというのは不安であるに違いない。
小さな子供なら、なおさら。
「そっか……頑張ってるんだな、おちびちゃんは」
ここで、むやみに大丈夫、といっても、彼女が安心することではないだろう。
そう思って、ぽんぽんと優しく頭をなでると、かすかに彼女の口が動いた。
「……かな」
「?なんだい?」
「あたし……嫌な子なのかな……っ」
勢いに任せてあげた瞳は、今にも泣き出しそうに潤んでいたけれど、
彼女は懸命に泣くまいとこらえているようだった。
その表情に、胸をつかれる。
「今はそうじゃなくても……未来では、あたしのお母さんなのに、
 そんなことで心配しちゃうなんて、
 あたし、嫌な子なのかな……っ!」
こらえきれず、瞳から一つ、二つ、雫が落ち、すぐに大雨になった。

ああ、

本当に、この子は。

小さな胸に、どれだけの不安を抱えて、今日まできたのだろうか。
過去という、本来相容れない、……相容れてはいけない時間帯にいる、未来の君。
だからこそ、本来ありえないはずの不安も抱えることになってしまう。
だけど君は物分りがいいから、その不安も小さな胸にしまって耐えているんだね。
泣かないでというには、あまりにも自分の立場は遠すぎる。
だから、せめて。
そう思って、優しく、彼女の小さな体を抱きしめた。
「……大丈夫。君は嫌な子じゃない。
 寧ろ、そう思える君は、十分立派だよ。未来のプリンセス・スモールレディ。 
 過去の外部系守護者として、敬意を表します」
そういって、彼女の手をとって、甲にキスをする。
「大丈夫。まだ『敵』は入りこんでいません。
 だから入り込む前に、貴方が徹底的に抑えるのです。
 あなたのお母様である、未来のネオクイーンセレニティを守るために」
恭しく礼をして、最後にウインク一つ。
「それもまた、貴方が過去に来た使命でもあると、私は思いますよ」
初めはよく意味が飲み込めず、きょとんとしていた彼女の顔は、
ぱっと花が開いたように、明るくなる。
「……はい!ありがとう!セーラーウラヌス!」
そう答えた声は、涙にかすれてはいたけれど、
揺るぎのない、力がこもった声だった。
「もったいないお言葉恐縮です……。
 ……元気になったみたいだね」
こちらが微笑むと、彼女は手でごしごしと残っていた涙を拭って
精一杯の笑顔で答えてくれた。
「はるかさん、あたし、決めたよ」
「ん?何を?」
「あたしね。もう遠慮しないんだ。
 もうとっことんあいつのこと、邪魔するし、嫌いに嫌いまくっやるって決めたの!
 あたしがずっと邪魔してれば、あいつも気がそれると思うから!」
そういいきる彼女の声に、先ほどの不安は感じられない。
「うん、頑張って。応援してるよ」
そうやって再度、彼女の頭をぽんぽんと叩いたときだ、
背後からガヤガヤという声とともにこちらに誰かが歩いてきた。

「あれ?ちびっこじゃないか?どうしたんだ、んなとこで?」

その足音の主が、驚いたように足を止め、
サングラスを外してこちらを見る。
すると、彼女は剣呑な表情できっとその人物を見据え……

「この際いっとくけど、あたしあんたなんてね
 だーいだーいだいっきらいなんだから!
 気安くよばないでよね!べーーーーっだ!!」

そうやって舌を出すと、彼女は一直線に走り抜け、向こうの角へと姿を消した。

「……な、なんだありゃ……」
出会い頭に『だいっきらい』と言われた本人は、度肝を抜かれたように、
その場に立ち尽くしている。
「ま、宣戦布告、ってところじゃないかな。
 ……きっと彼女の追及はこれから今まで以上に厳しくなるだろうね。
 それが嫌なら、さっさとおだんごを諦めることだよ。星野……光君?」
そう言って、背を向けたままひらひらと手を振る。
後ろから聞こえてくるごちゃごちゃ叫んでいる声を華麗に無視して、
止めていたバイクを発進させた。


未来の小さなプリンセス、私で何かできるのならば、
私のできる限りの力で、あなたを助けましょう。
それが私の使命であり……私の喜びなのですから。

fin



あとがき(反転)

まとまりとしては、星野出さない方が綺麗にオチるなーとは思ったんですが、
ちびちゃんの宣言(笑)を書きたかったので、こんな感じに。
はるかさんってちびうさのことなんていってたっけ……と思いつつ、
でも「おちびちゃん」って響きを使わせたかったのであえてそのまま出してみる。

ちびうさって結構口では強気なことを言っていても、
不安は抱えてるんだろうなーと思います。
星野がいたら、問答無用でつっかかってるんだけど、
絶えず不安もあって……でも胸にしまって1人でこらえてるってところがあると思います。
あ、考えてみればまもちゃんの性質強いかもですね。ここら辺。
今回はそんな胸の内(?)を見る感じで書いてみました。
少しでもお気に召されたらこれ幸いです。

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