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牽制


一度書きてぇええええ!と思っていた、まもちゃんと星野の話です。
















アイドル稼業は忙殺されるだけが仕事だと思われるかもしれないが、
それは仕事を選ばなかった場合のみだ。
俺たちスリーライツはそこらへん、大気というしっかりしたマネージメントができる奴がいるから、
質の悪い仕事はやらない。
だから、必然的にオフの日もできる。
しかし、オフの日だからといって、好きなこと……例えば好きな子とデートとか……いったことばかりができるわけでもなく、
俺は一人、いつもの喫茶店の4人がけの椅子の端に陣取り、
ストローを加えて、ヒマをもてあましていた。
そう、あの声が聞こえるまでは。
 


牽制
 

 
「ここ、いいかい?」
ふいに、後ろから誰かが声をかけてきた。
サングラスをした姿で上向きにストローを加えている俺に声をかけるなんざ、
よっぽど席が無くて混んできたんだろうか。
そんなことをぼんやり考えながら、
「どうぞ」
顔も碌に見もせずに、承諾すると、ありがとう、という声とともに、
相手は俺の向かいに遠慮なく陣取った。
……相手に承諾を得たとはいえ、座る席をずらすのが、暗黙のルールのようなものなのに、
わざわざ俺の真向かいに座るなんて結構いい根性してるなコイツ。
どんな奴なんだ、と顔をよく見ようとサングラスを外して……
 
 
俺は固まった。
 
 
そこにいたのは、まぎれもなく、俺が好きな子の彼氏である人物だったからだ!
「……衛……さん?」
慌てて口を塞いだけれどもう遅い。呆けた勢いで呟いた名前は相手にしっかり届いたらしい。
相手は顔をあげると、ああ、といった表情になり、微笑した。
「えっと、セイヤ君……だったかな。スリーライツの」
「はあ……まあ……」
ぎこちないのは、気のせいなのか、そうじゃないのか。
とにもかくにも、一番気まずい相手が近くにいる、というのは紛れもない事実だった。
相手もそう感じているのか、挨拶もそこそこにそそくさと分厚い本へと目を移し、
ノートにペンを走らせている。
しかし、ここで逃げ帰るのは癪だ。
ああ、癪以外の何者でもない。
そういう意味の分からない意地のために、俺はひとまず、まだ居座ることにした。
 

 
手持ち無沙汰もあいまって、目の前においてある相手の本の題名を読む。
うえ、遺伝子工学のなんたらかんたらとか、俺には理解できそうもない。
よくもまあ、こんな本を見てあまつさえ理解できるな……
「……大学の課題っすか?」
気まずいままなのも面倒なので、とりあえず、声をかけてみる。
「うん。それもあるけど……これは自学の意味も含めてるかな。
これから、多分この分野が重要になってくると思うから」
「へー……」
 
とりあえず、俺とは頭の構造が違いますってことか?そうなのか?
……相手は多分そういう意味はこめていないかもしれないけれど、
かすかに感じる俺への排他感は間違いではないのか、そうなのか。
……ちょっとカマをかけてみるか。

「そうなると、結構時間なさそうっすね」
「……そうだね、あんまりないかもしれないね」
「例えば、デート、とか」
「………………」
相手が、一瞬固まるのが分かった。そう、これはあからさまな挑発。
さて、あんたはどう出る?
しばらく黙ってペンを走らせていた相手は、カタリとペンを置いた。
「普通なら、ないかもしれないね」
へー、あくまで無難でくるか。そう思った瞬間、相手はじっと俺を見た。
「……だけど、作るさ、時間は」
その瞳にこめられているのは、明らかな牽制。
なるほど。さすが、無防備なお団子を彼女としているだけある。
俺の気持ちなんてお見通し、って訳ですか。
「さっすが、ガード固いっすね」
「まあ、ね」
静かに、ほんとに静かに、なんでもないことのような口調の中に、
混じるのは、火花。
ここはある意味戦場なのかもしれない。
「……君には、俺がいない間に彼女がお世話になったみたいだね」
「……そうっすね。かなりお世話しましたね。
 ほんと、あいつ毎日泣いてましたから」
「その点では、本当に感謝してる……だけど」
手をくんで、俺を見つめてくる相手は、もはや何も押し隠していなかった。
 
 
「渡さないよ」

 
群青色の瞳の奥に静かにまたたくのは、ただ一つの感情。
「…………あからさまな牽制、ってことですかね?」
「……そう取ってくれても、構わない」
お団子と一緒にいるときは見せない表情。
ふぅん、こいつもこんな表情をするんだな。
かすかな驚きを胸に、それでも、俺は負けじと食い下がった。
「……だけど、俺的には、衛さんには、もっと違う人がお似合いだと思いますけど
 同年代で、理知的な女性、とか」
「ダメなんだ」
瞬時に相手は否定する。ダメなんだって何が、と問いただそうとした際、
その表情がとても悲しく、辛そうなものに変わっているのを見て、
思わず言葉に詰まった。
 
 
「彼女じゃないと、ダメなんだ」

 
見覚えがある、その表情。
それは、「まもちゃんに会いたい」と泣き叫んだあの時のお団子の姿。
その顔にそっくりな表情で、そんなことを言われたら、
何も、いえなくなるじゃないか。
知ってるか?そういうのを反則、っていうんだよ。
 
「……、わーかった。俺の負けだよ」
「え?」
手を挙げて降参、のポーズをとったあと、
わざと明るめの高い声でいう。
きょとん、とした相手を前に、俺は立ち上がった。
「ったく、あんたには敵わないな。
このままつづけてっと、俺ヤな悪役みたいだから、イチ抜け。
ま、別にあんたからお団子取ろうなんて思っちゃいないから、安心してていーぜ」
そういうと、戸惑っている相手を背に、俺はつかつかと店を出た。
 
ったく、2人そろいもそろって、俺の付け入る隙を見せてくれない。
だけど、まあ、それだから安心できるところもあるんだろうか。
やけに眩しい青空を見上げつつ、そんなことを思う。
そういえば、ジュースの代金払ってないけど、
花はもたせてやったんだ。それくらいは受けてくれないとな、衛さん?


 
Fin



あとがき(反転)

ずっと書きたかったんだこれのターン。
星野VS衛。(笑)
星野ってセラムンキャラの中で一番書きやすいんですよ。
するするっと進むので心地いいです。何故だ(笑)
うさぎちゃん相手では引くことの多いウチの星野ですが、
衛さん単独相手だと、かなり強気になります(笑)
星野は多分自分の認めた相手じゃないと好きな人の相手としては認めないんじゃないかな。
でもまもちゃんだってやるときゃやるんだぜ!
そんなことを書きたかったように思います。
とりあえず、まもちゃんは、「星野」だと気づいてあえて相席になった設定。
気づかないふりしたり、もう最初から牽制オーラだしまくりっすよ。
だけど、静か。凄く静かで強かな牽制。それが衛。
星野はあからさまに表に出すんだろうなーと思うあたり、対極にいるような気がいたします。

そいえば、星野は、台詞ぬきで、モノローグでは最後だけ「衛さん」って言ってるんですが、
お気づきになった方はいらっしゃいますか?
ちょっとそこにこだわったので、気づいていただいていたら嬉しいな、なんて。


 
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Comment

無題
  • いずみ彗
  • 2008-09-23 01:34
  • edit
こんばんは、はじめまして。まもうさが好きでいろいろ渡り歩いているうちに辿りつきました。まもVS星って構図でのお話で、コレが一番好きだな…って思いました。
私はイケイケゴーゴーなタイプよりも、包容力のある見守ってくれる男性っていうのが好きで、でも、内心ではものすごくやきもち焼きで熱い人って大好きです。ここのまもはそんなカンジ。
たくさん素敵なまもうさ書いてくださいね。
ありがとうございます(^^)
  • たふあ るるく
  • 2008-09-25 18:38
  • edit
こんにちはーこちらこそはじめまして!
まもうさ渡り歩かれてたんですね!
な、なかま……!☆
まもうさ好きの方がおられるというだけで私は元気百倍です!

もったいなくも嬉しいお言葉、ありがとうございます……!
あんまりまもVS星って見ないんですが;
(探し方が悪いんだろうか……?)
私の中ではこんな感じですねー。
まもちゃんはほんと、包容力あると思いますよ!
そして、正しく仰るとおり内心ではとっても牽制していると思います。(笑)
だってうさちゃん一番大事ですからね!

素敵といっていただけてありがとうございます(*´v`*)
そういっていただけると、
パワーがあがります!
拙いものばかりですが、どぞまたお時間がある時に来ていただければ幸いですv

ではでは、コメントありがとうございました!

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