忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

君への思い3(最終章)



これで最後です。とりあえずまもちゃんのヘタレさが異常。
弱気なまもちゃんが嫌いな方は注意してくだされ。
因みに、アニメベースなので、まもちゃんのうさぎの呼び方は「うさこ」です。













 

「……そろそろ、話してくれないか?」

いつものように、黙ってソファーに座ったままの彼女。
それまでの、俺だったら、また黙って隣に座っただけだっただろう。

だけど、今日は、違う。

逃げないと決めた。だから、俺は彼女の方に正面から向き合い、
フローリングの床に膝を着き、手を取って、
じっと彼女を見た。

「……なに、を」
いつもと違う俺の態度に彼女は戸惑った様子だったが、
すぐ俯いて、俺の視線と目を合わせようとはしなかった。

「何か、俺に話すことがあるから、
 ずっとこうして、毎日俺の家に来てるんだろ?」
「……別に……そういうことじゃ、ないよ」
動揺した調子で彼女は視線を彷徨わす。
そんな彼女から目を離さずに俺はなおもゆっくりと話しかけた。

「そうか。……でも、俺はうさこの話が聞きたいよ。
 学校の話とか、家族の話とか、今までずっと何してたか」
「………………」
「黙ってるより、何でもいいから、うさこの声が、きけると、俺は嬉しい」

それは、心からの本心。
黙ってることに、慣れてしまって、声を聞くことが極端に少なかった。
前のように、ひっきりなしに話す彼女の声が、
とても愛しいものだということを忘れていたんだ。

「あの、ね」

長い沈黙のあと、ぽつり、と彼女が声を出した。
「うん」
「今日……ね、小テストが……あって……
 あんまり……できなかった……の」
「そうか……わかんないとこ、あったのか?」
「うん……最近勉強手につかなくて……
 やらなきゃって思ってても、すぐ寝ちゃう……の」

そういうと、彼女は自分から俺の手を握り返した。
何かを言い出そうと、声に出そうと、頑張っている、そんな姿だった。

「あのね……ほんとはね……ずっと……ずっと
 まもちゃんに言わなきゃってことが……あって……
 でも……言いたくないって気持ちもあって……
 どうすればいいのか……わかんなく……て……」

途切れ、途切れに精一杯彼女なりに何かを話そうとしてくれる気持ちを
無下にしないように、一つ一つに相槌を打つ。

「でもね……言わなきゃって思うの……
 だけど、……だけどこれ言ったら、まもちゃん、
 あたしのこと嫌いになるんじゃないかって……
 そう思ったら……こわく……て……っ!!」

だんだん湿り気を帯びた声は、ついに涙で止まってしまった。
ぽろぽろと大粒の涙が、大きな目からこぼれでる。
まるで、今まで溜めていたものが一気に噴き出しているようで、
俺は彼女の背に手をやって、あやすように抱きしめた。

「どんなことがあったって、俺が、うさこを嫌いになるわけ、ないだろう?」
「ううん、嫌いになるよ!だって……あたし……あたし……」
激しさを増す彼女の言葉と思いに負けないように、抱きしめる腕に力をこめる。
「大丈夫、俺は何があっても、うさこが……好きだから」
静かに、静かに語りかけた声に応えるように、泣き声が薄らいでいくのが分かった。


「……あのね」

どれくらい、時間が過ぎただろうか。
小さな、小さな彼女声が、静かな部屋に響いた。

「あたしね、告白されたの…………星野、に」

なけなしの勇気をはたいて言ったであろう言葉に、俺はただ、頷く。

「まもちゃんがいなくて……凄く…………寂しくて、
 がんばってたんだけど……
 敵が、現れた時に、星野が、投げたバラで、
 まもちゃん……思い出しちゃって……
 もうどうしていいか分からなく……なった時に……
 酷いこと、言ったのに、星野がいったの
 『オレじゃダメか』って……」
「うん」
「その時に……その時にね……
 あたし、好きなのは……まもちゃんだけなのに、
 凄く……ドキドキして…………
 何もいえなかったの…………」
涙が枯れるほど、ずっと泣いていたはずの彼女の声が、また、震え出す。
しがみついている腕が、震えていた。
「ずっと……ね、まもちゃんに会うまで……何も思わなかったけど……
 まもちゃんに会ったらね……凄く……凄く、
 まもちゃんに酷いことしたんじゃないかって、ずっとそのことが頭から離れなくて。
 そんなあたしが……あたしが嫌いだったの……っ!!
 ごめんね……まもちゃん……ごめんねぇ……っ!!」

今にも、狂いだしそうなくらいの激しさに、胸が、熱くなる。
こんなにも、こんなにも辛い思いをさせていたのに、
気づかないふりをしていたなんて。
なんて、俺は身勝手だったんだろう。

「いいよ。もういいよ。うさこ」
思わず、目頭が熱くなる。
胸が、張り裂けそうに、痛い。
こんなにも、小さな胸を痛ませていたなんて……。
「だって……だってあたし……!」
「いいんだよ、もう……いいんだ。苦しまなくても」
腕から逃がしてしまわないように、抱きしめて、彼女の耳元で囁く。
こんなに思われているのが、わからないくらい、
俺は自分の思いに、囚われていたんだ。

「いいんだ。別に、うさこが俺以外の人に心惹かれても、
 ……好きになっても、いいんだ。 
 うさこが俺を好きだから、俺もうさこが好きなんじゃない。
 俺が、うさこを好きなんだ。
 それは、今までもずっと変わらないし、これからだって、そうだ」

君がずっと君らしくいられるなら、俺はどうだっていい。
そう、どうだっていいんだ。
 

これが、本当の、俺の気持ち。俺の思い。


忘れかけていた、本心。
「それよりも、俺の方がよっぽどうさこに酷いことをした。
 敵に簡単に捕まってずっとうさこに寂しい思いをさせるしかなかった。
 いつだって、助けてくれたのは、うさこだったんだ。
 守ると言ったのに、いつも守られてばかりで、
 頼りなくて、本当に、ごめん。ごめんな……」
ありったけの思いをこめて、彼女を抱きしめる。
本当に、いつだって、支えてもらっているのは俺ばかりで。
赦して、もらえるとは到底思えないけれど、
ただただ、謝りたかった。

「謝らなくて、いいよ」

そっと、肩に手が触れる。
思わず見つめると、涙に濡れた優しい瞳で彼女は俺を見つめていた。

「守られてばかりなのは、あたしの方だもん。
 あたしって甘ちゃんだから、ずっとまもちゃんに守ってもらってばかりだったもん。
 ずっとまもちゃんはあたしを守ってくれてた。
 だから、まもちゃんは、全然悪くないよ」

子供のように泣きじゃくっていた顔から一転して、母親のような表情になる。
本当に、彼女はいろんな面をもっていて、
そんな彼女に、俺は救われているんだなと心底思った。

「俺も、うさこは悪くないって思ってる……ってことは、
じゃあ……おあいこってことに、なるな」
おずおずと呟くと、暫くきょとん、としてから、彼女がパッと笑った。
「ふふ、そうだね」
久しぶりに、本心から、彼女が笑った顔を見た。
つられて、俺も自然と顔が綻ぶのを感じる。
2人の間のわだかまりが、やっと解けたような、そんな安心感が胸を満たした。

「まもちゃん。あたし、まもちゃんのこと、大好きだよ」
「俺だって……愛してるよ、うさこ」

好きになってほしいとか、嫌いにならにならないでほしいとか、
そういう思いも確かにあって、そんなに広くもない心を戸惑わせるけど、
本当に愛するという事は独占なんかじゃなくて。

ただ、君への、思い。

Fin











あとがき(反転)

ここまで読んでくださった方、ありがとうございましたー!
なんか最後凄くながったらーしくなったけど、
ま、書きたいことは書けたからいっかなーとか思ってます。

スターズの星野の告白から、戸惑い続けているウサギちゃんを見て、
まもちゃんが例え戻ってきたとしても、
このことを気にしないで普通に甘えられるわけはないよなーと。
絶対どっかでひっかかってるはずだよなーと
ひっしひしと感じて、こんな話が幕間にあったらいいな、と思い、
勢いのまま書き上げました。
うん、ほんとに勢いだから、おかしいところはいろいろあると思うけど、
そこはひろーい目で見てやってください;

因みにこの題名、最初は「届かぬ思い」だったんですけど(某スリーライツの歌で)
いつの間にか「君への思い」の方があってるなーってことで変更になりました。
なんとなく、
星野→うさぎは「届かぬ思い」
衛→うさぎは「君への思い」
っていうイメージのような気がしますね。

でも、これで描き足りないこともあるので、
またおまけを次に掲載します。(多いなそういうの(笑))
また見てやってくださいなー。

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする:

Copyright © ★ミライカゾク★ : All rights reserved

「★ミライカゾク★」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]