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この話はアニメスターズの後、という設定です。
うさぎが、星野に対して揺れ動いたという自覚があります。
あと、まもちゃんすげーナイーブです。ヘタレともいう。(マテ)
苦手な方はご注意くださいませ~。
外は、灰色の雲が空を覆っていて、小雨が糸のように降り注いでいた。
カンカンカン……
コンクリートを歩く、やけに渇いた足音は、すでに当たり前のものになっていて、
戦いが終わって、戻ってきたのはつい最近のことなのに、
慣れという感覚は、きっと思いよりも先になじんでしまうものなのだと
苦笑とも、自嘲ともつかない感情が胸を支配した。
カチャリ。
自分の部屋のドアノブを回すと、案の定、開いていて、
自分よりも先に来客が来ているのだということを知る。
らしくもなくきちんと揃えられた、茶色い靴を目にして、
今日も使うことがなかった自分用の鍵を、キーラックにかけた。
「今日も、来てたのか」
薄暗い部屋の中、電気もつけずにソファーに座っている人物に声をかける。
返事もせず、ただ、こちらを振り向いた気配を感じ取り、徐に電気をつける。
「電気くらい、つけてていいんだぞ」
パチン、という音とともに、部屋中に広がった明るさは、
そこに座っていた彼女の、光輝く金色の髪を、際立たせた。
「うん……ちょっと」
言葉の曖昧さを濁すように、口元だけ、笑みをたたえて、彼女はこちらを向く
青い瞳が、彼女の心情を表すかのように、切なげに揺れた。
今まで以上に手強い敵、ギャラクシアに、アメリカに留学する飛行機の中で、不覚を取り、
長い間スターシードにされていた俺が、元に戻ったのは、戦いが終わったつい最近のことだ。
事実上、半年以上も行方不明だった俺を取り巻く状況は
けして優しいものではなく、行方不明だった際の信用を取り戻すために、
留学先はもとより、本来在学中の学校での手続きも予想以上に多かった。
現在はその手続きも終わり、
本来なら、すぐに留学先に向かわなければならない状況だったが、
まだ身辺が落ち着かないからという理由で、こっちに残っているのには訳があった。
「……ココアでも飲むか?」
座っている彼女と同じ体勢で、問いかける。
その彼女は、学生鞄をぎゅっと握り締めたまま、無言で首をふった。
視線を合わせようとしても、彼女は違う場所を向く。
俺はそっと側を立つと、どことなく湿って落ち着かない空気を拭うために、
飲む気がしないコーヒーを入れるために台所に立ち寄った。
そう、ここに残っている訳は、一重に彼女のこの態度だった。
戦いが終わってから、今日まで、彼女は学校が終わってから毎日俺の部屋に来ては、
何をするでもなく、ただ黙って座っているのがもはや日課となっていた。
その間、俺が何をしていても、動かずじっと座っていて、
夜が来て、遅くなるから送っていくというと、
やっと家に帰るといった調子の繰り返しだった。
別段、何があった訳でもない。
離れていた時期はあったけれど、思いは変わっていないことは、
戦いが終わった日に2人で確かめたはずだ。
だけど、そこからずっと彼女の様子はおかしくて。
心配で、何があったのかと何度も聞こうとして、
でも、果たして俺にそれを聞く資格があるのかという思いと、
すでに思い当たる、苦い確信を持った答えを聞きたく無いという恐れから、
今までずっとこの調子できていた。
コーヒーの湯気がたったカップと、それからいらないといわれたものの、
結局いれたココアのカップをソファーの前の机において、俺自身は彼女の隣に座る。
彼女が、少しでも気分を紛らわせるように、とテレビのスイッチをつける。
たわいないワイドショーの番組が大袈裟な司会者の表現と、
笑い声によって目の前で繰り広げられていた。
次から次へと繰り出される意味の無い話題を何の気もなく眺める。
話題が終わりにさしかかった際、ふいに歌が流れ出した。
軽快に滑り出した音に、突然、彼女の体がびくりと震えた。
見ると、目の前には『スリーライツ』の文字と、メンバーの姿。
一番大きく映るメインボーカル。
彼女の顔を見ると、悲しみか、痛みともつかない辛い表情で下を向いていた。
その瞬間、ああ、やっぱり、と不安が的中したような、心が枯れるように締め付けられる痛みに襲われる。
やっぱり、そうなんだな。
星野光。セーラースターファイター
彼とは最後、彼が自分の故郷である星に帰る、
ほんの束の間の間しか会ったことはなかったけれど、
帰り際に彼女に放った言葉と、なにより視線から、
彼女に親愛以上のものをもっているということはすぐに察知できたし、
また、当の彼女の態度からも、何か違った絆が二人の間にあるということを見せ付けられたような気がしたことを思い出す。
俺の知らない間に、2人の間に何があったのか。
彼女の思いに、彼が何を落としていったのか、
彼女の口から、そのことを聞きたかったけれど、
彼女の憔悴した様子を見れば、そんなことができるはずもなく、
テレビを消した後、ただ、黙って、細い体を抱きしめた。
To Be
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