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授業参観(後編)

前編のつづきです。















授業参観(後編)





(バカッバカバカうさぎのバカッ!!)
今朝から何度も心の中で繰り返した言葉を、こりずに再度再生する。

授業参観当日。あれほど気づけオーラを発し、
時には遠まわしに言葉にしたにも関わらず、
彼女……未来の自分のママ……は自分の願いに一向に気づく素振りも見せず、
出かけるときにさえ、「作文しっかり読んでくるのよー」としか言わなかった。
その姿に、どれだけがっかりさせられたか、当の本人はわからないままに違いない。
そう思った、ちびうさは、また再度あの言葉を心中で繰り返し……
そして、深いため息をついた。

(まあ……結局あたしが悪いんだけどね……)

素直に「授業参観に来て」といわずに、遠回りな言い方しかできなかったのは、
性格もあるけれど、それと同じくらい遠慮があったからかもしれない、と思う。
彼女は、確かに未来の自分のママではあるけれど、
この次元では、自分を生んでいないから、自分にとっては「ママ」であっても、
彼女にとっては、自分は「娘」ではまだない。
そう気づいたのは、いつの頃からだろうか。
そう思ってしまったが最後、いつものような小競り合いはできるものの
肝心な時に、肝心な思いがいえなくなってしまった自分がひどく恨めしい。
そう、一番バカなのは、自分なんだ。
そう思うと、諦めというか、悲しみというか、なんともつかない感情がこみあがってきて、
ちびうさははぁ、とまた深いため息をついた。




キーンコーンカーンコーン
この時代独特の始業の合図が鳴り響く。
普通なら、始業開始までわいわいと賑わって落ち着きの無い子供たちが、
今日はいやに礼儀正しく席に座っている。
親の手前でいいところを見せたいというところだろうか。
緊張しつつも、どこか嬉しい表情で席についている同級生の顔を見て、
ちびうさはなんとなく、羨ましくなった。

(でも、育子ママが来てくれるからいいもん)

そっと後ろを向いて、青いウェーブがかかった髪を捜してみる。
しかし、いつもなら一番といっていいほど早めに来ているはずの育子ママの姿が見えない。
(どうしたのかな)
何か用事でもできて、遅れたのだろうか。
もっとよく見ようと目を凝らそうとした瞬間、先生が教室に入ってきたので、その作業は中止せざるをえなかった。

 

(遅いなぁ……)
作文を読む時間が迫ってきている。
ちびうさの心もそれに呼応して、焦ってきていた。
さっきからちらちらと後ろの様子を窺がってみたけれど、
一向に育子ママの姿は見えない。
来ることができないことは今までなかったけれど、
きっとできないなら、ちゃんと言ってくれるはずだと思うんだけど。

(……もしかして、忘れてたりは……しないよね。
うん、うさぎならともかく、育子ママなら絶対忘れない。)

だけど、もし来なかったら…………
誰にも聞かせられないまま、作文を読むのだろうか。
そう思うと、ぎゅっと胸をつかまれたようにいたくて、寂しかった。
(こんなことなら素直にうさぎに来てって言えばよかった)
涙腺がゆるみそうになるのを必死にこらえて、平常心を保とうとするのに
時間を浪費したせいか、気づけば、時計は作文を読む時刻を刻んでいた。



「それでは、最後に、月野うさぎさんに作文を読んでもらいたいと思います。
月野うさぎさん?」
「……はい」
先生の言葉に、泣き出しそうな思いを必死に堪えて、
目の前にある作文用紙を力強く握った。

「●年●組、月野うさぎ
『わたしのパパとママ』
わたしのパパとママは……」

“大丈夫、誰も聞いてなくてもできる、あたしは未来のプリンセスだもの。”

そう思っていたのに。

そこまで読んで、言葉が詰まってしまった。
必死に続きを読もうとしても、出てくるのは吐息ばかりで、
声が、出ない。

「月野……さん?」

ざわめきだした周囲を代弁するかのように、先生の声が遠くから聞こえる。
(どうしよう……)
震える胸と、出ない声。
あふれ出してくる感情が、涙になって出てくるその瞬間


ガターーーーン!!!


盛大な音が、辺りに響き渡った。
思わず、反射的に音のしたほうに振り向く。


夢かと思った。


だってそこにいたのは、ずっと願ってもやまない、
来てほしいとずっと思っていた2人だったから。

2人は、周りの人間にぺこぺこと頭を下げながら、
こっちを見ている、ちびうさに気づくと、にっこりと笑った。
それだけ。
たったそれだけのことなのに。


不思議。


胸から、一気に力が湧いてくる。

ちびうさは、作文をもう一度握ると、
前をしっかりと向いて、はっきりとした言葉で話し出した。

「●年●組、月野うさぎ
『わたしのパパとママ』
わたしのパパとママは、今遠いところにいるけれど、
わたしにとっては、一番大事な人たちです。

パパは、何でも物知りで、傷ついた人や、病気の人を助けることが得意です。
他の人たちも、いろんなことをパパに聞きにくるくらい、
パパってすごいんだなって思います。
でも、すごく忙しくてもパパは寝る前に必ずわたしにいろんなお話を聞かせてくれます。
私のことを大事に思ってくれてるんだなってわかって凄く嬉しいです。

ママは、静かに、街の人たちを見守っていて、とても優しいママです。
だけど、街が危険になったりすると、
一番最初に飛んで言って、その人たちを守ります。
凄く強くて、わたしもいつかそんな風な強い人になりたいと思います。
ママもすごく忙しくても、わたしが寂しくて泣いている時は、
わたしが眠るまでずっと側にいてくれます。
ママのやさしいにおいと一緒に眠ると、
その日はいつも楽しい夢を見るので大好きです。

たまに厳しい時もあるけれど、パパとママはわたしのことを大切に思っていてくれるから、
そうなんだな、と思うと、
本当にわたしはパパとママの子供でよかったと思います。

わたしは、パパとママが、誰よりもだいすきです」

一気に読み終えて、ぺこり、とお辞儀をすると、
わっと拍手がわきおこった。
2人を見ると、少し照れくさそうにしながら、
それでもちびうさの方を向いて、拍手を送っていた。


ねぇ、
ねぇ、ほんとだよ。
今はまだ、あたしのパパとママじゃないかもしれないけど、
あたしはまだまもちゃんとうさぎの娘じゃないかもしれないけど。
あたしにとっては、誰よりも大好きな……


パパと、ママ、なんだからね。



fin



帰るときは3人一緒に。手を繋いで。


あとがき(反転)

……ということで、授業参観でした!
最初うさぎの一人称で書こうと思ったんですが、
……うさちゃんの一人称って……?と
分からなくなったために、
三人称のようなごっちゃさ加減な文になりました。
うん、でも文がおかしいのはいつものことだからキニシマセン。

ほんとはこのあとの3人一緒の会話も書こうかなと思ったんですが、
今回はあえて書きませんでした(笑)
ご想像にお任せしますー。
……しかし、作文と授業参観って今見てみたら、
某尊敬サイト様と同じようなテーマになってしまっていたことに気づき、
一人震えています(爆)
すみません……わざとじゃないんです……orz

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